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アルバム『夜明け前』発売記念インタビュー 
聞き手:ペット・サウンズ・レコード 森 陽馬

ペット・サウンズ・レコードがずっと応援し続けているバンド、東京ローカル・ホンクの14年ぶりアルバム『夜明前』が発売になりました。多くの方に聴いていただきたい傑作です。その発売を記念して、ホンクのメンバーである木下弦二さん、新井健太さん、田中邦雄さんへ本作に関してお伺いしました。作品を聴きながらご覧いただければ幸いです。

 森 アルバム『夜明け前』発売おめでとうございます。東京ローカル・ホンク名義では2011年発表作『さよならカーゴカルト』以来、約14年ぶりとなります。まずは新作を待ち望んでいたファンへ一言お願いいたします。


木下弦二「東京ローカル・ホンクというバンドを応援してくれているファンのみなさん。ヒット曲もないしメディアにも載らない、若くもないし見た目もさえないこのバンドを応援してくれるあなたは、普段何を見て、何を感じ、何を喜び、何を悲しんでいる人でしょうか。
私にその全てを想像することはできません。だけどこう思うのです。<あなたが大切にしているものは、わたしたちのそれとよく似ているのではないだろうか>と。これだけは守りたい何か、それは言葉では言えなくてもきっとわたしたちが大切にしているものととても良く似ている気がしてならないのです。そんな人はたとえ会ったことがなくても、友だち、あるいは仲間と呼びたい。その友だち、仲間に、わたしたちの大切なものを詰め込んだアルバムを届けることが出来て本当に嬉しく思います。」

 森 ホンクとしては14年ぶりの新作ですが、その間に木下弦二さんのソロ・アルバムとして2016年作『natural fool』、2021年作『Nosso Noise』のリリースもありました。どちらも作詞・作曲は木下弦二さん自身が手掛けていますが、ホンクとソロの違いはどこにあると考えていますか?
 例えば、「夏みかん」、「さよならにありがとう」、「みもふたもない」、「夜明け前」は、2016年ソロ作『natural fool』にも収録されていました。でも、本作のホンク名義の楽曲は、まぎれもなくホンクの曲になっていますね。言葉にするのは難しいでしょうが、教えていただければと思います。


木下弦二「楽曲に関しては分けて考えていません。どの曲もホンクのメンバーと演奏すればそれはホンクナンバーになります。おっしゃる通り私のソロ・アルバム『natural fool』に収録されている曲も今回新たに録音しました。『natural fool』は2012年に東京を離れ、生活のこともありソロ活動をしていくにあたって名刺のような音源の必要を感じたことが制作の動機です。その際、過去に発表している曲も作ったときの形というか、原石に近い形で出してみよう、という考えが浮かびました。ホンクの過去の作品、『natural fool』、今作『夜明け前』と聴いてもらえばわかると思いますが、ホンクのメンバーの演奏は、テクニックとか言う次元ではなく強烈な存在感を放っています。今作『夜明け前』にしても楽曲の幅はかなり広いと思っています。カントリー的なセッションや幻想的な曲、演歌を意識した曲、ゴスペルに通ずる3コードのシンプルな曲、70年代ポップス的なもの、ソフトロックとも言えそうなもの、どの曲でも新井健太がベースを弾き、田中邦雄がドラムをたたき、みんなでコーラスをしたらホンクになってしまう。いつも当たり前にやってることですが、今回録音のかなりの部分とミックスの全てをやってみて、これは本当にすごいことだと思いました。新井にしろ田中にしろ、フレーズを真似して弾くことは出来ても決してああいうサウンドを出すことは出来ない。これは難易度が高いというだけで差別化される演奏家とは根本的に違うということです。そんな言い方でしか彼らの凄さを表すことができません。みなさんその耳で聞いて確かめてください。笑」

 森 コロナ渦へ入った2020年頃から、ギターの井上文貴さんがライヴに出演しなくなり、本作にも参加していませんね。ファンとしては気になるところですが、脱退となっているのでしょうか? 再加入の可能性はありますでしょうか?

木下弦二「彼が参加しなくなった理由は今でもはっきりわかりません。私の受け止め方は、コロナ渦の間に精神的な不調期があり、その後バンドに対して距離を取る必要があった、ということです。その後4人で会って話しましたが、脱退したつもりはないそうです。笑 こればっかりはわかりませんが、いつかフラッと戻ってくるかもしれません。」

 森 本作のジャケット・イラストは、かわいくもあり、暗喩も込められているようでとても印象深いですね。このイラストはどなたが手掛けたのでしょうか? イラストに込められたテーマは何かございますか?

 

木下弦二「今回のアルバムのアートワーク、デザインは全てGraphic Group Twelve代表の戸上泰徳さんという方の仕事です。ホンクの作品や私のソロ作品でもお世話になっていて、私は全面的に信頼しています。今作はまず音を聴いてもらって、イメージを伝えつつ、向こうが音から受け取ったイメージを形にしてもらい、それを基に更にミーティングで煮詰めていく形で進められました。アルバムの楽曲は明るい曲から重たいテーマの曲まであるので、明るすぎず暗すぎず全曲を通して一つの物語として受け取ってもらえるような、そんな物語の表紙と思えるイラストに仕上げてもらいました。とても気に入っています。」

 森 田中ヤコブさんによる本作の推薦コメントが素晴らしいですね。
ホンクへの愛情と本質を突いている文章だと思います。田中ヤコブさんと交流したきっかけ、推薦文を依頼した経緯などありましたら教えてください。


木下弦二「ヤコブくんは、彼の最初のソロ・アルバムにコメントを依頼されたのが知り合ったきっかけです。
レーベルの方から「彼、ホンクの大ファンなんですよ」と言われて、奇特な人がいるなあと。笑 で聴いてみると確かに変わってる。笑 引用元をちらつかせて自分をアピールしている感じじゃなくて、もっとひたむきな感じというか、とにかく音楽にまみれて、音楽を抱きしめて生きている、そんな感じが伝わってきました。その後彼とはソロで共演したり、彼のバンド家主のレコ発にホンクを呼んでもらったりと、やり取りが続いていました。で、今回のアルバムに寄せて、誰かに紹介文というか音楽に入り込むきっかけとなる文章を頼めないかな、と考えたときに彼の顔が浮かびました。」

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★田中ヤコブによる推薦文
<音楽はアニメのおまけではない。音楽はてめえの趣味をひけらかすアクセサリーでもない。音楽とは何か、生活とは何か。俺が好きなものってなんだっけ。ホンクは俺の感性をリセットしてくれる。ホンクには本質しかない。音楽以外には何も付随しない。ただ音楽そのもの。音楽が聴ける幸せを噛み締めている。>

 森 1曲目「夏みかん」
2016年ソロ作『natural fool』に収録されているヴァージョンは、河野沙羅さん(PiratesCanoe)とのデュエットでした。沙羅さんの無垢な歌声とマンドリンも良かったのですが、今回ホンク・ヴァージョンでのコーラスがとても感動的です。

この歌をホンクで新録音し1曲目に配したのは意図が何かあったのでしょうか?


木下弦二「この曲をホンクで録音したのは、より良いものになるだろうという確信があったからです。この、正確じゃないけど気持ちいい、楽しい感じを出すのは実はなかなか難しいのでは、と思っています。
 とてもいい感じで仕上がったので、アルバムの最後の方に配置したらエンドロールが上がっていくような気分になるかと思っていました。が、ちょうどその頃ホンク1stのアナログ化の件でやり取りをしていた久保田麻琴さんが「夏みかんを1曲目にしたら皆スッとアルバムに入っていけるよ」と助言してくれて、なるほどそうかもしれない、と考えてこうなったという次第です。」

新井健太「普段コーラスだけでやってた曲だけど、録音ではゲンジ君のギターにジャムっぽくドラムとコントラバスを重ねてみようという事でした。基本のベースラインを入れた後、チョットしたフレーズをアルコでダビングしたんだけど、それをエンディングで使ってくれてて楽しいカンジになって良かったです。」


田中邦雄「弦二さんが福岡でギターと歌をクリック無しで録って来たものを聴きながら、ハチ(春日博文)さんに借りた高級なノイマンのマイク1本で、まず私が聴きながらドラムを録音。次にあらけん、最後に3人でコーラスを入れた。ドラムはボニードラムで最初に特注で作ってもらった10インチ、12インチ、18インチ(どれも浅胴)を叩いたもの。」

 

 森 2曲目「日が暮れて」
この歌にはどのような想いが込められているのでしょうか?

 

木下弦二「これは、日常に対する愛しさとやるせなさ、そして当たり前の日常を送ることが出来ない人々の暮しを少しだけ想像してみる、そんな歌です。もっと言うと、自分の日常と、日常が許されない人々の暮らしは実は地続きである、という考えまで含んでいます。このサウンドは今までにない感じですが、同時にとてもホンク的であるとも思います。」
 

新井健太「普段ライヴではアップライトのベースでやっていけど、録音ではちゃんとしたコントラバスを使いました。いつもやっているラインのオクターブ下の音も弾いて、ゲンジ君に上手くミックスしてもいました。ガンボスタジオの川瀬さんがコントラバスにはコレというコンデンサマイクを立ててくれて、ビックリするほど気持ち良く弾けました。」

 

田中邦雄「私はマレットで淡々とそして熱く! コントラバスを弓で弾くあらけんのプレイが聴きどころ。この曲以降のドラムセットは次にボニーで作ってもらった、12,14,18インチのジャズキット。シェルの材質は当時ボニーでは試作段階のチューリップウッドを使ったもの(その後のBop)。バッチをJAM(シリーズの名前)にあえてしてもらったのは私のセットのカラーがピンクシャンパン(ピンクにラメ入り)なのでその色のセットと統一感が出ると思ったから(その時まだBopは無かった)。なので実は中身(シェルの材質)はその後のBopシリーズ(バッチの色は緑)です。」

 森 3曲目「お手々つないで」
この曲の独特なリズムはどのような発想から生まれたのでしょうか?あと、スタジオ・ヴァージョンはキーボードが印象的に使われています。このキーボードはどなたが弾いているのでしょうか?


木下弦二「これは盆踊りの輪の中心にある櫓の上で歌っているイメージです。日本の明るい演歌とエチオピアの音楽(驚くほど日本の音楽と共通点があります)が混ざったような、架空のアジアの町のお祭りのつもりでやってみました。歌声は拡声器でひずみながら家並みにこだましています。このグルーヴはホンクリズム隊の真骨頂といえます。今回のアルバムでは、ベース、ドラム、コーラス以外の楽器はすべて私が演奏しています。」


新井健太「今ライヴでやってる曲の中でも、独特のノリが楽しくて好きな曲です。ゲンジ君のダビングとミックスは抜群の雰囲気でイントロから最高!」

田中邦雄「自分の中ではこの曲のプレイはセカンドラインと~音頭の融合なんです(どこが?とか言わないように笑)。」

 

 森 4曲目「セキグチくん」。
ニール・ヤングwithクレイジーホースのような武骨なバンド・サウンドがかっこいいですね。それと、小学校の子供たちが「あなたたちはなんにでもなれる」と先生に言われ、「ヘリコプターになりたい」というセキグチくんと対比して、大人の先生へ「あなたはどうですか?!」と問いかける歌詞が面白くもあり、とても痛快です。この歌に出てくるセキグチくんとエピソードは実在するのでしょうか?


木下弦二「この曲はセキグチという飲み友達が、酔っ払って吐いた言葉が元になっています。“乗り物になりたい”とか“動物になりたい”とか小さい頃に考えていた人はけっこういるのではないでしょうか。私は保育園に通っている頃、犬になりたいと思っていました。」


新井健太「今回の中では、私的にはオーソドックスなギターロック曲だととらえていて、ベースを少しブースターで歪ませた音で弾きました。」


田中邦雄「ガツンと一発!バンド・サウンド!♪私は真っ当な大人に成れますか? 先生!本当に成れますか?♪(無理だったようです。諦めます。)」

 

 森 5曲目「夜明け前」。
<労働歌>と紹介してからライヴで歌われることが多いこの歌は、どのようなきっかけで作られたのでしょうか? また、アルバム・タイトルにこの曲名を選んだのは何故でしょうか?


木下弦二「福岡の中心街にあるお店で歌ったあと、電車がなくなり家まで歩いて帰る路上で歌詞とメロディーが同時に出てきました。団地の階段を登りながら「出来た」と実感してドアを開け、部屋に帰って歌詞を書き留めたのを覚えています。
東京から住居を移してみると、観光で訪れたときと街の見え方は全く変わります。私は肉体労働で這いずり回って疲れていたホームシックもあって(笑)街は灰色に見えました。そんなときに「ウチで歌ったらいいよ」と言ってくれるお店と巡り合ってライヴをやると、そのお店までの道のりや周りの風景に色がついていくような気がしました。「ああ、みんなこうやって自分なりの色をつけながらその街に馴染んでいくんだなあ、東京に来た人たちもみんなこうだったんだなあ」と思いました。あまりにも遅い気付きだったと思いますが、この歌を歌うときにいつも思い出します。
アルバムのタイトル案はいくつか挙がりましたが、「ほんのり明るさが漂う感じがいい」という意見が一致してこれに決まりました。この、“バンド丸ごと何もやっていない感”もホンクらしさの極みですね。笑」

新井健太「いつもゲンジ君がこれはホンク流の労働歌と言ってて、俺としてはとにかく太くシンプルに、音符の長さだけに集中して、骨だけのカンジで弾いています。クニ君のドラムもシンプルなんだけど、後半のフィル、タムのカンジとか凄くシビレる。普段、沢山弾いたり叩き過ぎたりしないから、ココぞの一発が凄く効くのだ。」


田中邦雄「とにかく余計なことはせず歌と一体化を目指した。何故か私の中でのイメージとしてはジョニー・キャッシュ。」

 森 6曲目「みもふたもない」。
2016年ソロ作『natural fool』のヴァージョンもバックはホンクでしたが、今回のヴァージョンの方が熱を感じられて、ガツンと響いてきますね。「この世の人はみんな狂ってる。生まれたばかりのこの赤ん坊が、だんだん狂ってゆくのを誰も止められやしない。」この歌詞をライヴで初めて聴いたときは衝撃を受けました。弦二さんがインド旅行へ行った時のエピソードが歌のモチーフになっているそうですが、よろしければ当時のその話と、この歌に繋がる想いを聞かせてください。


木下弦二「これも福岡でのソロライヴの後、歩いて帰ったときに頭の中で出来上がった曲です。曲の内容とインド旅行は直接関係ありませんが、“マイ・ゴッド・ハズ・ノー・ネーム”というフレーズは、20代後半の頃訪れたパキスタンの田舎で、地元の学校の先生に「わたしたちイスラム教徒は日に5回祈る他にも感謝や願い、嬉しいとき悲しいときなど折々に祈りを捧げる。あなたたち日本人は無宗教だというが、そういうときどうしているのか」と訊かれて、思わずカタコトの英語で「アイ・ウィル・プレイ、バット、マイ・ゴッド・ハズ・ノー・ネーム」と答えたことから生まれました。それが何十年かの時を経て歌に使われたということです。これは私なりの和製英語だと思っているので発音もカタカナで、自分の言葉として歌っています。」

新井健太「シンプルなコード進行のAとBが間奏とエンディング合わせると8コーラス繰り返されます。こういう曲でベーシストとして下を守り、とにかく歌詞を聴かせる事に徹するというのを出来るようになったのはホンクで友部正人さんのサポートをさせていただいた経験があったらからだと思います。」


田中邦雄「私の中ではジョン・レノンな一曲。特に弦二さんのこの曲でのギターはいつ聴いても涙がちょちょぎれそうになります。この世界の不条理。クソッたれ~!」

 森 7曲目「さよならにありがとう」
この曲もソロ・ヴァージョンに比べ、後半演奏の盛り上がりに感動しました。「遠く離れ思い出すその笑顔は宝もの」という歌詞に、この歌を聴く人それぞれの思い浮かべる笑顔があるのだと改めて感じました。この歌を書いたときに、弦二さんが思い出したのはどなたの笑顔でしたか?


木下弦二「ソロでも旅をするようになった頃、色んな場所でいろんな人に出会い、どこのライヴでも夢のような忘れがたい夜が毎晩続いて、気が変になりそうでした。笑
そんな気持ちを歌にして、自分なりに整理しようと作った曲です。」


新井健太「こういう緩いカンジも、少しは力抜いて弾ける様になったかなぁ。」


田中邦雄「せつない。ありがとう。俺だって本当は心の底ではいつも想っているんだよ。」

 

 森 8曲目「ダークマター」
弦二さん&ホンクには珍しい英語タイトルの歌ですね。宇宙のことを歌っているのではなく、「わからないって最高。わかったフリはもう止めだ。」という言葉が刺さる1曲です。この歌に込めた想いを教えてください。


木下弦二「目に入る、聞こえてくるもの全てを言葉に落とし込んで“解った気分”になるってどうなのかな、よくわからないことが多いというのは豊かであるということじゃないのかな、という考えが元になった曲です。「答えよりも、解けない謎を抱きしめていたい」とよく思います。」

新井健太「ゲンジ君の歌をより良く出す為に、普段ライヴでやっているkeyより低く設定していて、それに伴いベースのポジションと弾き方をチョットだけ変更ました。」


田中邦雄「この曲はあらけんも言っているとおりキーが低い為、ライヴの時のドラムの演奏は小さく叩くコトを心がけていますが、それが功を奏してキュッと纏まった演奏になる。それがこの曲のカラーだとも思っているので、レコーディングでも同じような感じを大事に叩いています。わからないってイイよね~♪」

 森 9曲目「軽い翼」
これはライヴで披露されていなかった珍しい曲で、僕は2024年12月29日パラダイス本舗でのライヴで初めて聴きました。曲調には今までのホンクにはなかったような雰囲気もありますね。この歌を作った時のテーマがあったら教えてください。


木下弦二「これは自分としては挑戦でした。それは、今までの禁じ手としていた音楽的な(ある意味陳腐とも言える)常套句やパターンなどを使って、自分ならではのホンクらしい曲が作れるだろうか、ということでした。大ファンというわけではありませんが、桑田佳祐さんの曲にはそういう“王道なのに独特である輝き”が感じられて、自分なりに参考にしました。
で、その曲を、再現性を無視したドリーミーな楽曲としてパッケージし配信でシングルを切る!、という計画だったのですが、そうはなりませんでしたね~。笑 歌詞については、相手は必ずしも異性と限りません。相手の苦悩や思いやりに、離れた後で気づき愕然とする様が歌われています。これは、ホンクを知っている人に「えっ!?これホンク?音楽性変わった?」と言わせることを目指しました。笑」


新井健太「コノ曲はゲンジ君が今まではあえて使ってこなかった、流行りのポップスでよく使われるコード進行技法を解放して作ったんだと聴かせてくれたので、俺も今までとはチョット違うアプローチでベースを弾かせてもらいました。ただ録音が先行だったので、コーラスをやりながら弾く事は念頭に置いてなくて、ライヴでやるのは大変かもしれません。」


田中邦雄「14年振りのアルバム。ライヴに来る人達は知ってる曲ばかりなので、「せめて1曲書いてくだせ~よ!ボス!」と弦二さんに頼みこんで書いてもらった曲。ホンクの新機軸となる名曲誕生!ではありますが、演奏しながらのコーラスがコレまた大変でげすよ~!親び~ん!あ~!軽々しく「新曲作って!」とか言っちゃいけないと心から思いました(汗)。でもイイ曲だから無問題!」

 森 10曲目「あおいとりをたべる」
ホンクのライヴで聴くと、「さよならがなければ、しあわせなのかな」、「しあわせじゃない日は、いらない日なのかな」の歌詞部分で、いつも涙が出そうになってしまいます。初めて聴いたときから大好きな1曲です。弦二さん自身は本作におけるこの歌をどのように捉えていますか? また、何故この曲名になったのでしょうか?


木下弦二「このタイトルは、「あおい とりを たべる」という自由律俳句だと思ってください。笑 それは冗談として、幸せというものはわたしたちが考えているようなものとは全く違う、なんというか別ジャンルの概念なんじゃないか、と思い続けた結果出来上がった曲です。青い鳥は愛でなければいけないのに、幸せになりたいあまりに青い鳥を食べてしまう。わたしたちが普段やっていることは、そんなことばかりじゃないのかな、というのがタイトルに込められた意味です。わからないですよね。笑
この曲はコロナ渦の後、3人になってから初めて入ったリハーサルで「いつもやっていた曲ではなくて全く新しい曲から始めよう」と提案して持ち込んだ曲です。ある意味3人ホンクの出発点ですね。」

新井健太「この曲のドラムとベースのパターンはよくあるものだけど、俺的にはコレこそホンクの黄金リズムだと思っ
ています。やってて気持ちイイ。シンプル過ぎるけど他の奴らには出来ないという自負があります。」


田中邦雄「ドゥーストドン ストドン ストタコタコ♪とシンプルにユニゾンで合わせること気持ちよきかな!な一曲。答えは無い。でもやるんだよ。やるしか無いんだよ。わからないってイイよね~。と嘯(うそぶ)きながら。武士は喰わねど高楊枝ってね。」

 

 森 11曲目「僕は大丈夫」
この歌は聴いていると心が開かれるような気持ちになって、本作のラストにもふさわしい1曲と感じています。ライヴを重ねる毎に力強くなり成長していったこの歌への想いがありましたら教えてください。


木下弦二「この曲はうまく説明できません。何が言いたかったのか自分でもよくわからないけれど、ホンクで演奏していると何かが込み上げてきます。上手いこと言えてる気もしないし、ツッコミどころもある曲だと思いますが、3人で演っているとそんなことどうでもよくなってきます。
今回のアルバムには、シンプルに人数分の音数しか入っていない曲から、再現性を無視してダビングを施した曲までかなり幅があります。そんな中で、この曲は歌も含めての同時録音でダビングはコーラスだけ、ライヴ演奏とほぼ変わらない一番シンプルな曲になりました。バンドの裸の姿であるこの曲でアルバムの幕を閉じるのもいいんじゃないかな、と思
いました。」


新井健太「「軽い翼」の一つ前の新しい曲で、ゲンジ君が曲を持ってきた時、前までだったら4人でスタジオで音を出しながらアレンジが決まっていくのが普通だったけれど、コロナ以降は井上君がいないという事で、自然ともう一本のギターの音を想定せずにベースを弾いているカンジがします。」


田中邦雄「♪大丈夫じゃないよ いつか死んでしまうのに。健康の為なら命も投げ出すのに♪と、現代人という愚かな生き物を見事に喝破した一曲。とまぁそんな簡単な内容ではないですが、主人公はこれ以上ない程に切羽詰まっているわけです。が、最後の一言、♪言ってみようかな?♪に何故か救われると言いますか、ニュートラルに引き戻される気がしますな。コレも叩いていて物凄い気持ちが入っちゃう曲ではあります。」

 森 木下弦二さん、そして東京ローカル・ホンクにとっての夢はなんでしょうか?


木下弦二「うーん、思いつきませんが、聴く人がいる場所で演奏できることがすでに夢のようです。その瞬間「ああ、自分は今、音楽のために生きているんだなあ」と感じ入ってしまいます。そんな日々が1日でも長く続いてほしい。と同時に、人々が、友人や家族や遠いところに住む人たちが、喜びを持って生きていける世界が実現してほしい、と心から願っています。大げさに聞こえるかもしれませんが、バンドが有名になることより、いや有名になることと同時に(笑)、そっちの方が大事だと思えてなりません。」

 

 森 最後に、本作を手に取ったファンの方々へコメントをお願いいたします。


木下弦二「いままで待ってくれていたあなた、そしてこれが最初の出会いになったあなたに向けてこの音楽は奏でられ
ました。どうか、物語をくぐり抜けるように味わってください。そしていつか、どこかで会ったときには「あれから
どうしてた?」と、笑顔で手を握り合いましょう。」

 森 木下弦二さん、新井健太さん、田中邦雄さん。素晴らしい作品をありがとうございました!
 

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TOKYO LOCAL  HONK

 

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